人種化のプロセスと
メカニズムに関する複合的研究

本共同研究は、科学研究費補助金基礎研究から助成を受けています。科研基盤研究(S)
Blumenbach's five races
J.F. ブルーメンバッハの5分類
研究の背景・目的

欧米における人種研究には膨大な蓄積があるが、それらは概して、欧米の国内外植民地経験に基づいている。本研究は、そうした環大西洋中心のパラダイムから脱却するために、日本・アジアの事例と欧米や他地域の事例とを接合させることにより、「人種化」 “racialization”のプロセスとメカニズムを明らかにすることを目的とする。

具体的には、以下の3課題に取り組む。

  1. 人種は近代欧米が構築したものとする通説を見直し、中世のヨーロッパとアジアの事例をとりあげ、それらに通底する人種化のメカニズムに迫る。
  2. 日本・アジアにおける人種をめぐる言説の連鎖・転換のプロセスを考察する。
  3. ポストゲノム時代の課題とされる薬剤の応答性と罹病率の「集団差」をめぐる科学言説について、社会制度に注意を払いながら文理融合の研究班によって考察する。
研究の方法

代表者は、国際共同研究のための理論的枠組み・研究方法・研究計画を提示する。その上で、代表者・分担者を中心に班ごと(歴史班、社会班、科学班)に基本文献の購読や、理論的枠組みに沿って事例研究(資料収集、フィールドワーク)を行う。国際シンポジウム開催・研究成果刊行にも力を注ぐ。

期待される成果と意義

本研究の独創性は、従来ほとんど組み込まれることのなかった日本・アジアの視点を活かしながら、従来の欧米中心的理論に替わる新しい人種研究の理論を構築することにある。またポストゲノム研究等での「集団差」をめぐる文理融合のプラットフォーム構築は、科学者の倫理問題や、人文学縮小への圧力など難題を抱えている日本においても貴重な存在となろう。また本研究では、シンポジウムやメディア発信などを通して、社会還元にも力を注ぐ。

人種は学術的にも高等教育においても国際的に重要視されているテーマである。本研究は、人文・社会科学を中心とする学術的立場から、人種主義に関する社会意識向上の一助となるよう努めたい。

Blumenbach’s influence on Meiji textbooks (Takezawa 2015)
小林義則「地理総論」(文學社、1882より)
人種は学術的にも高等教育においても国際的に重要視されているテーマである。本研究は、人文・社会科学を中心とする学術的立場から、人種主義に関する社会意識向上の一助となるよう努めたい。
当該研究課題と関連の深い論文・著書
  • 竹沢泰子(編集責任)シリーズ『人種神話を解体する』全3巻 東京大学出版会 2016.

『1 可視性と不可視性のはざまで』(斉藤綾子・竹沢泰子編)
『2 科学と社会の知』(坂野徹・竹沢泰子編)
『3 「血」の政治学を越えて』(川島浩平・竹沢泰子編)

  • Yasuko Takezawa and Gary Okihiro, eds. Trans-Pacific Japanese American Studies: Conversations on Race and Racializations, University of Hawai‘i Press, 2016.
  • Yasuko Takezawa, ed. Racial Representations in Asia, Kyoto University Press, 2011.
    竹沢泰子編著『人種概念の普遍性を問う』人文書院 2005.
研究期間

平成28年度—平成32年度