アメリカ人類学会で発表しました。

artwork by: Yoshirei Shin

2017年11月29日〜12月3日の間ワシントンDCで開催されたアメリカ人類学会において、”Between Visibilities and Invisibilities: Forms of Racism and Anti-Racism in the Twenty-First Century”と題したセッションを組み、人類学者の田辺明生さん(東京大学)、ジョン・ラッセルさん(岐阜大)それにFaye Harrisonさん(イリノイ大学/国際人類学民族学連合会長)、Kristín Loftsdóttirさん(アイスランド大学)と一緒に発表してきました(私たちのセッションは12月2日)。シリーズ「人種神話を解体する」の第1巻でも取り組んだ課題ですが、メンバーは全く異なり、人類学者だけの国際共同研究のテーマです。インドにおいて資源目当ての森林開発が進む中で急速に変化する指定トライブと指定カーストの社会的位置付け(田辺さん)、2015年「黒人」になりすましていたことが発覚したレイチェル・ドレザル氏をめぐる議論とトランスレイス・トランスジェンダーをめぐる問題(ラッセルさん)、アメリカ合衆国における天然資源と先住アメリカ人の権利剥奪の問題(Harrisonさん)、アイスランドにおいて外見上識別できないにもかかわらず急速に排斥の対象となってきたリトアニア人(Loftsdóttirさん)、身体的に識別可能か否かで異なる差別形態や表象のあり方をもたらすことの概念化(竹沢)といった、現代の人種主義と密接に関わる問題を取り上げました。スバドラ・チャンナさん(デリー大学)が全報告をうまく織り交ぜてコメントしてくれました。こちらもいずれ何らかの形で英語の論文集として出版できたらいいなと考えています。

また学会の合間にDCの博物館・美術館を廻れたことも、個人的には大きな収穫でした。人種神話の3巻で扱ったロジャー・シモムラさんの絵画2点の現物を観て彼の完璧な筆使いに感嘆。”Shimomura Crossing the Delaware”の作品が、政治家や芸能人などの著名人の人物像ばかりが飾られている1990-Presentの部屋の中で、画家の力量だけで飾られている唯一の作品であることも友人として誇らしく思いました。白人中心の正統派美術館で日系アメリカ人の作品が常設展示に含められることは凄いことだと思います。
2008年に開館されたNewseumは、4時間半ぶっ通しで見入ってしまいました。ヘイトスピーチを「表現の自由」だという人たちには(政治家も含めて)、ここでFirst Amendmentの由来を学んでほしい。他に印象に残ったコーナーは、公民権運動、ウォーターゲート事件、FBI、9/11(いずれも報道との関係)です。9/11のビデオでは周囲の人もみんな泣いていました。亡くなる直前までタワーに向かって走り、灰の中写真を撮り続け、第二タワーの倒壊に巻き込まれてしまった写真家のネガがその後発見され、その写真や家族へのインタビュー、使用されたカメラも展示されていました。Trumpをネタにしたコメディアンたちのトークには、声をあげて笑ってしまいました(来日時の安倍首相も登場していました)。ピュリッツァー賞のそれぞれの写真の裏の物語を知ることができ、写真と二重に感動しました。DC訪問時はホロコースト博物館とともに研究者には必見の博物館です。(Text by 竹沢泰子)

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このセッションでわたしは、Forms of Racialization in Odisha, India: Projecting Anxieties of Globalization onto the Marginalized という報告をしました。アメリカ東海岸での学会報告は久しぶりでした。不思議といいますか、当然なことなのかもしれませんが、場所がちがうといろんなものについてのみえかたが違ってきますね。たとえば「人種」ということばでアメリカ合衆国で思い浮かべるものは、日本やインドやイギリスとはまったくちがうのだな、ということを改めて感じました。情報はどこにいても手に入る世の中になりましたが、グローバルにものを考えるためには、やっぱりいろんなところに実際に行って、人と話をしないといけないな、と実感。貴重な経験でした。(Text by 田辺明生)

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素晴らしいなどとは到底いえないこの時代にあって、我々のパネルは素晴らしいものとなりました。新世紀という未来を思うとき、きまって私たちは希望を抱くものです。しかし、21世紀も20年近くとなる今、人間の共通性を人類全体で認識するという夢は、遠のくばかりです。代わりに我々がこの新世紀に目の当たりにしているのは、ホワイトハウス大統領執務室に座する情緒不安定で無鉄砲な独裁者気取りの人間であり、迫りくる核戦争の恐怖であり、世界中で復活する人種差別、排外主義、移民排斥主義、不寛容の亡霊です。そして権力者たちは、こうした現象に対する説明責任を果たさず、逃避を続けているのです。
一方で、AAAがこれらの課題にどのように対応していくのか、また、我々パネルとそのプロジェクトが現在進行中の対話の促進にいかに貢献していくのかということは、一つの希望であると言えます。その希望は、これまで不可視であった連携を可視化させることで未だ果たされぬままの今世紀の約束を果たすことができるかもしれないと我々に再び希望を抱かせ、永続的解決をもたらすこととなるでしょう。(Text by ジョン・G・ラッセル)

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